諸刃にしたたる夢や希望(明智)
ゆらゆら松明の炎が揺れるのをどこか遠い世界の出来事のように感じながらただひたすら一点を見つめる。星一つ無い漆黒に白銀が眩しく、それより眩しい白が視界の真ん中にある。馬上、しんと鋭い空気の中その白は頼りなく揺れ、誰のものとも分からないため息に時折震えた。その様を眺めながら名前は息を殺している。
今でも祖父母、父親や兄の死顔が過ぎることがある。その度度し難い憎悪に身を焦がしては泣いた。まるで生き残った己を責めるような彼らの影に怯えては泣いた。解放されたいと願い続けながら、ただいたずらに生き続けてきた。己の葛藤など知らず、彼の銀色は己を側に置き続けた。時折己が殺した兄のような眼差しをしていると、嬉しそうに囀った。そうして厭きること無く長い時間双眸を見つめ、やがて疲れ果てた名前が弱く抵抗すると彼は笑うのだ。いつかあなたは、あなたの兄同様の道を描くのだと。
名前に、兄にとって彼は恐怖であった。絶対的な憎悪の元でもあった。彼が同じ時を生きる間は彼女に、彼にとって苦痛以外の何者でもなかった。逃げようとねだったこともあった。しかし彼はそれすらも出来なかった。結果、彼は、自ら、己の首を絞めた。主君たる彼を裏切り、結局逃れることが出来ないまま死んでしまった。それは即ち憎悪も恐怖も全て名前の肩に重く圧し掛かる結果を生むと言う事であった。
しかしそれももう直ぐ終わるのだ。主君を討った不忠の士として誰かがあの白銀を討ち果たすだろう。その時自分は彼のあの透き通る白に刃を穿てばいい。自分は別段手を下したい訳ではない。ただ、解放されたいだけだ。誰かの凶刃が彼の銀色を裂くならばその白いうなじに刃を当てるだけでいい。望みは、仇討ちよりも、解放だけなのだから!
例え不孝者と謗られようが関係ない。この足掻きようの無い沼から出られるならば喜んで謗られようではないか!!名前は喉を鳴らして息を呑む。
ざわめきに、馬上の白銀が再度揺れた。かすれた声が己を呼んでいる。声を返す名前をあの二目が見つめている。不意に、彼の言葉を思い出した。あなたはあなたの兄同様の道を描くのだと、彼は笑って言った。名前はそれを軽く笑い、闇をゆっくり踏みしめた。嘶きが聞こえる。強い殺意が肌を撫でる。見える世界に広がるものを果たして自分は受け入れるのか。もう一度、光秀が名前を呼んだ。見上げた双眸はとても冷たく、それに名前は強く恐怖を感じる。早く終わらせなければと、早く解放されなければと、
「あなたはあなたの兄同様の道を歩くのですね」
今でも祖父母、父親や兄の死顔が過ぎることがある。その度度し難い憎悪に身を焦がしては泣いた。まるで生き残った己を責めるような彼らの影に怯えては泣いた。解放されたいと願い続けながら、ただいたずらに生き続けてきた。己の葛藤など知らず、彼の銀色は己を側に置き続けた。時折己が殺した兄のような眼差しをしていると、嬉しそうに囀った。そうして厭きること無く長い時間双眸を見つめ、やがて疲れ果てた名前が弱く抵抗すると彼は笑うのだ。いつかあなたは、あなたの兄同様の道を描くのだと。
名前に、兄にとって彼は恐怖であった。絶対的な憎悪の元でもあった。彼が同じ時を生きる間は彼女に、彼にとって苦痛以外の何者でもなかった。逃げようとねだったこともあった。しかし彼はそれすらも出来なかった。結果、彼は、自ら、己の首を絞めた。主君たる彼を裏切り、結局逃れることが出来ないまま死んでしまった。それは即ち憎悪も恐怖も全て名前の肩に重く圧し掛かる結果を生むと言う事であった。
しかしそれももう直ぐ終わるのだ。主君を討った不忠の士として誰かがあの白銀を討ち果たすだろう。その時自分は彼のあの透き通る白に刃を穿てばいい。自分は別段手を下したい訳ではない。ただ、解放されたいだけだ。誰かの凶刃が彼の銀色を裂くならばその白いうなじに刃を当てるだけでいい。望みは、仇討ちよりも、解放だけなのだから!
例え不孝者と謗られようが関係ない。この足掻きようの無い沼から出られるならば喜んで謗られようではないか!!名前は喉を鳴らして息を呑む。
ざわめきに、馬上の白銀が再度揺れた。かすれた声が己を呼んでいる。声を返す名前をあの二目が見つめている。不意に、彼の言葉を思い出した。あなたはあなたの兄同様の道を描くのだと、彼は笑って言った。名前はそれを軽く笑い、闇をゆっくり踏みしめた。嘶きが聞こえる。強い殺意が肌を撫でる。見える世界に広がるものを果たして自分は受け入れるのか。もう一度、光秀が名前を呼んだ。見上げた双眸はとても冷たく、それに名前は強く恐怖を感じる。早く終わらせなければと、早く解放されなければと、
「あなたはあなたの兄同様の道を歩くのですね」
この記事へのコメント